弁護士の事件簿・コラム

逮捕されたらどうなるのか

弁護士 中里 勇輝

 今回のコラムでは,警察に逮捕された場合,身体の拘束がいつまで続くのかということを説明します。マスコミ等では,事件を起こした疑いのある人を「容疑者」と呼ぶこともありますが,このコラムでは,刑事訴訟法の表現にならって,刑事事件を起こしたと疑われる人を「被疑者」と書いています(余談ですが,「容疑者」という表現は刑事訴訟法にはなく,私が知る限り,出入国管理及び難民認定法や犯罪捜査規範で用いられている程度です)。

1 逮捕されずに捜査が進む事件
 刑事事件には,在宅事件といって被疑者の身体を拘束しない事件と被疑者の身体を拘束する事件があります。
 在宅事件となるか,被疑者の身体を拘束する事件となるかは,事件の重大性や証拠の収集具合によって変わると思われます。

2 警察官による逮捕
 では,逮捕されて身体を拘束する事件となった場合,どのように事件は進むのでしょうか。
 刑事訴訟法203条1項は,「司法警察員は,逮捕状により被疑者を逮捕したとき,・・・留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し,留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。」と定め,同5項は,「第一項の時間の制限内に送致の手続をしないときは,直ちに被疑者を釈放しなければならない。」としています。
 つまり,逮捕から48時間以内に釈放されるか,もしくは検察官に事件が送致されるか,ということになります(実際には検察官に送致される事件がほとんどです)。

3 検察官による勾留請求
 被疑者が検察庁に送致された場合について,刑事訴訟法205条1項は「検察官は,第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは,・・・留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し,留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取った時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。」とし,同4項は「第一項・・・の時間の制限内に勾留の請求又は公訴の提起をしないときは,直ちに被疑者を釈放しなければならない。」としています。つまり,検察官が被疑者を受け取ってから24時間以内に勾留請求されるか,もしくは釈放されるかということになります。
 勾留請求された場合,裁判官が勾留を認めるのかどうかを判断します。裁判官が勾留を認めた場合,勾留として身体拘束が続き,裁判官が勾留を認めなかった場合は釈放されることとなります。
 最近,酒気帯び運転で逮捕された有名人の報道がありました。これは,検察官が被疑者の勾留を請求したのに対し,裁判官がこれを認めず,検察官が裁判官の判断に対して準抗告という不服申立てをしたものの,その不服申立ても認められずに釈放されたというケースになります。

4 勾留とは
 勾留とは,逮捕の後に引き続く身体の拘束のことです。検察官は,勾留によって被疑者の身体を拘束した上で捜査を進め,被疑者を起訴するかどうかを決めます。
 通常ですと,逮捕による身体の拘束は,最大で警察で48時間,検察で24時間となります。これに対して,勾留による身体の拘束は原則10日間ですが,さらに10日間の勾留期間の延長が認められる場合もあります。
 その10日間から20日間の勾留期間のうちに,検察官は,被疑者を起訴,つまり刑事裁判にかけるのかどうかを判断します(勾留の満期が土日となる場合は,その前の金曜日に判断することが通常です)。

5 起訴された場合
 勾留期間のうちに起訴された場合,起訴後も身体の拘束が続くことになります。
 ただし,罰金100万円以下の刑罰となる場合,被疑者に異議がなければ,検察官は略式命令という書面による裁判官の判断を請求します。この場合,勾留期間のうちに裁判官の判断が出て,釈放されることとなります。
 検察官が罰金100万円以下の刑罰では済まないと考えた場合は,裁判所の法廷での裁判(ドラマなどでも流れるもの)が行われることとなります(「略式命令請求」に対して「公判請求」などといわれます)。
 公判請求となった場合,身体の拘束が続いたまま裁判が進むことになりますが,公判請求された場合,保釈によって釈放が認められることがあります。
 保釈とは,保釈保証金の納付等を条件にした釈放のことです。保釈は,すべての事件で認められているわけではなく,裁判官が保釈を認める必要があります。保釈保証金の金額を定めるのも裁判官ですが,その金額は事件や被告人(起訴された人のこと)の財産等によって変わります。
 そして,保釈が認められようとも,認められなくとも,裁判の結果,無罪や罰金刑,執行猶予が付いた判決とならなければ,刑務所に入る(いわゆる「実刑」)という流れになります。

6 まとめ
 これまでの話を整理すると

在宅事件か身体を拘束する事件か
     ↓
逮捕後48時間以内に検察官に送致されるかどうか
     ↓
検察官が24時間以内に勾留を請求するかどうか
     ↓
裁判官が勾留を認めるかどうか,勾留が延長されるかどうか
     ↓
勾留期間のうちに公判請求で起訴されるかどうか
     ↓
保釈が認められるかどうか
     ↓
判決が実刑となるかどうか

という流れで,身体の拘束が続くのかが決まってくることになります。
 ちなみに,ここまでは一般的によくある流れを説明したものに過ぎません。事件によっては手続や日数など違いがあることにご注意下さい。

7 最後に
 逮捕や釈放は,事件や証拠の内容,被疑者と被害者の関係性など多様な事情を考慮して判断されます。例えば,家族が逮捕されてしまった場合や,何か事件に関わってしまって逮捕されてしまうおそれがある場合,早めに弁護士に相談されることをお勧めいたします。

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