横浜入管の視察に同行しました

弁護士 大村 俊介

2017年2月14日

1 はじめに
 昨年秋のことになりますが,私が所属する関東弁護士会連合会有志で横浜入管(正式名称は,東京入国管理局横浜支局)に行って参りました。横浜入管は,JR根岸線の新杉田駅から,バスで15分ほどの工場地帯の中にひっそりとあります。横浜入管は,神奈川県に住む外国人の方の在留資格の審査,国外退去手続,船で出入国する外国人の出入国審査などを所管業務としており,神奈川県に住む外国人の方たちにとっては,非常になじみ深い施設です。
 私たち弁護士は普段から,入管に収容されている方たちに面会に行き,難民認定申請や仮放免手続,在留特別許可の申請などのお手伝いをすることがありますが,施設の中の居住環境や食事環境をつぶさに見ることはできません。ですので,実際に中に入って見たり,職員の方たちと意見交換ができ,貴重な機会となりました。

2 入管の収容施設
 施設見学は,収容施設内の居室から始まり,運動場,監視室,収容されている方が暴れたときに隔離する保護室,診察を行ったりX線写真を撮る医務室,領事館の方が被収容者と面会をする際に使用する特別室などを見ることができました。子どもと面会する場合などは,事前に予約をしておけば,この特別室を使わせてもらうことができます。通常の面会室はアクリル板越しとなってしまうので,このような面会の機会は収容されている方にとっても有意義です。現在の建物が建設されたのは平成21年で,まだそれほど年数が経っていないためきれいで,清潔でした。

3 貧弱な通信環境
 しかし,被収容者の通信環境は非常に貧弱だという印象を受けました。日本の入管施設では,収容されると,インターネットを利用したり,外部からの電話を受けるということができません(テレホンカードを差し入れてもらい,公衆電話から掛けることはできます)。被収容者の中には,難民認定申請や在留特別許可の申請をしている方も多く,証拠収集のためにインターネットを利用したり,外部の協力者と緊密に連絡をとることが不可欠です。弁護士としても,聞きたいことがあるときに,収容されている方からの電話を待つか,面会に行かなければならず,非常に不便を感じています。イギリスでは,インターネットに接続したパソコンが置かれ,被収容者に携帯電話が支給されていつでも通話ができるようになっており,被収容者の人権に配慮された取扱いになっています。横浜入管の状況はこれとはまったく対照的であり,改善が必要だと感じました。

4 異物混入が多発する食事
 また,施設で提供される食事への異物混入問題についても取り上げられました。横浜入管では収容されている方に提供される食事について,平成27年に9件,平成28年に7件の異物混入が発生しており,そのなかには昆虫の破片が入っていたもの2件,イスラム教徒に対する食事に豚肉由来の食品が入っていたもの3件が含まれます。横浜入管での発生件数は他の施設と比べて突出して多くなっており,NHKなどでも報道されました。
 収容されている方にとって,日々閉塞された施設内で過ごすストレスは,いつ強制送還されるかという不安とあわさって非常に辛いもので,その中で食事は数少ない楽しみとなっています。その食事に昆虫の破片が入っていたり,イスラム教徒の方にとっては絶対に食べてはいけないものである豚肉由来の食品が入っていることがあり,同じような間違いが繰り返されているため,収容されている方の中には,「わざとやっているのではないか」と入管に対する疑いを深めている方もいます。
 そこで私たちは今回,納入業者の選定の経緯,入管による契約業者の作業現場の視察状況について回答,改善を求めたのですが,入管側の回答は,異物の混入経路が特定できていないのですぐに改善することは難しい,というものでした。しかし,これは言い方を変えれば,被収容者が入れている可能性が否定できないと言っているようなもので,到底納得のいくものではありませんでした。

5 おわりに
 ともすると収容されている方は犯罪者と混同されがちですが,そうではありません。すでに人生の半分以上を日本で過ごしていたり,訳あって国に帰れない人も大勢います。
 日本の入管行政では,そういう方たちに対する無期限の収容,通信の制限,食事に異物が混入しても抜本的な対策に乗り出さないという杜撰な対応がまかり通っています。国家が自由を奪って管理する以上,人として守られるべき最低限の権利を当然に守るのが,人権国家の務めではないでしょうか。
 今回の視察では入管行政の課題を改めて認識することになりました。私たちは引き続きモニタリングを行い,粘り強く改善を求めていくとともに,収容されている外国人の方たちの人権が守られるよう,努力していきます。

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