債権法改正について

弁護士 井上  泰

2019年7月5日

1 今回のテーマ
 民法の契約に関するルールを大幅に改正する民法の改正法が2020年4月1日に施行されます。
 もともと民法の法律改正は、2017年6月に成立し公布されましたが日常生活に身近な契約のルールに関するものであり、私たちの生活への影響が広範囲に及ぶことから、通常の法律よりも長い周知期間をとることになりました。
 このコラムでも2018年1月に「法定利率」について取り上げましたが、今回は「保証」に関する改正についてとり上げます。

2 事業に関する債務についての個人保証の特則
(1)これまで、個人による「保証」に関するトラブルは数多く発生していました。事業をやっている友人や親族などから「絶対に迷惑をかけないから、事業資金の融資を受けるために保証人になってほしい」などと頼まれて、これまでの心のふれあいやつきあいから断り切れずに保証人になったところ、その依頼した友人や親族が破産してしまい、保証人となった個人がその支払いの責任を負うことになって困り果ててしまうという事態が多く発生していました。
 その原因として、個人として保証契約を結ぶ際に、そのリスクの理解が不十分であったり、実際借り入れを行う本人の支払の能力などについての十分な情報が与えられていないことも少なくなく、保証契約を結ぶにあたって正しい判断ができなかったことが上がられます。
 また事業に関する融資に関しては予想外にその金額が大きくなることも多く、借入本人に支払能力が無くなると保証人には予想外の重い責任が課せられることになる傾向があったのです。

(2)そこで、改正法は事業の為の債務について個人が保証人になるときは保証人となろうとする人に対して、借り入れをする本人の債務(主債務)や保証人自身が負う保証債務の内容、それを履行する意思があること等を詳しく公証人に伝えて筆記してもらい、その内容を確認した上で署名押印する書面(保証意思宣明公正証書)を作成するという方式が取り入れられました(改正法465条の6第2項)。

(3)なお、会社などの事業者の借り入れに関してその経営者に関しては、この確認方法は不要とされています(改正法465条の9)。業務執行の決定に関与する事ができる場合にはお付き合いや情にほだされて保証をするというリスクが少なく、その支払能力などの情報を入手する権限を有することからといわれています。

(4)借り入れをする本人(主債務者)には、事業のために負担する債務に関して個人に保証を頼むときは、保証人になろうとする人に対して、自分の財務状況や、他の借金やその支払い状況、借り入れの際の担保の有無など正しく情報を提供する義務が課されれることになりました(改正法465条の10第1項)
 主債務者がこの義務に違反して、情報の提供をせず、また誤った情報を提供して、保証人になろうとする人がそれらについて誤認をし、その誤認に基づいて保証契約を結んだ場合に、そのことを債権者が知り得た場合には、保証人は保証契約を取り消すことができることになりました(改正法465条の10第2項)。

3 個人根保証契約に関する改正
 貸金などの債務についての根保証契約(継続的な取引から生じる不特定の債務をまとめて保証する契約)については、その保証をする限度額(極度額)決めない場合は無効になることや借入元本がに定めが5年を超えたら無効になる等の保証人の保護規定が2004年に設けられていました。
 しかし、根保証契約一般に関して保証人を保護するために、貸金などに限らず、あらゆる債務に関して個人根保証契約について保証人を保護する規定が拡張され適用されることになりました。
 例えば、アパートや家の賃貸借契約における個人保証契約に関しても、極度額(責任を負う限度額)を定めないと無効になることが定められています(新法465条の2)。
 また、会社に従業員に採用された場合の身元保証契約にもその趣旨が及ぶと考えられます。


 以上が民法の債権法における保証に関する改正の主たる改正点です。2020年4月以降、実務でどのような運用となるかを見極めて行こうと思います。

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