外国人のリーガルアクセス向上を目指して

弁護士 大村 俊介

2016年2月20日

 先日,関東弁護士会連合会主催の「外国人相談者懇談会」が東京・霞が関の弁護士会館で開催され,私も出席してきました。

 この懇談会は例年,弁護士だけでなく,市役所,国際交流協会,法テラス,入管に収容された外国人の方を支援する団体などから,日々外国人相談を担当されている方たちが参加し,外国人相談担当間の連携強化,ノウハウの共有が目的とされています。実際,約100名の参加者のうち,半数以上が弁護士でない方でした。

 懇談会は大きく2部に分かれ,第1部では「国際家事事件」をテーマに,相談者と相談担当者に扮した弁護士が登壇し,離婚,DV,認知,在留特別許可といった日常の相談でもよくでてくるトピックで寸劇が披露されました。この寸劇は,「悪い例を提供する」という設定で,相談担当者役の弁護士が,とがり声で,「それは無理だよ,諦めなさい。」などと,間違った回答を相談者に対して畳み掛ける演技に,会場からは笑いが巻き起こる一方,解説役の弁護士が,誤っている箇所を丁寧に指摘し,解決策を明解に説明すると,参加者は一様に溜飲を下げる,というように,大いに盛り上がりました。

 DV相談では,平成26年4月から日本でも効力が発生することになったハーグ条約にも言及がありました。国境を越えた子どもの不法な連れ去りが生じた場合,締約国政府同士が連携して,面会交流や強制的な子の引渡しを実現する国際的な枠組みですが,日本ではまだ実施例がほとんど共有されていません。相談が来た場合,どのように対応すべきかについての解説は,弁護士でないの外国人相談担当者だけでなく,弁護士にも役立つ内容でした。

 第2部では,グループワークを行い,「相談の際に心がけていること」「どう対応していいか分からなかったこと」などの経験をシェアしました。参加者の方々からは,外国人の方は相談に行ってもたらい回しにされてしまうことが多く,相談に来る時点で相当なストレス,不安を抱えている方が多いという話や,そうだからこそ,母語で話せる相談担当者によく話を聞いてもらうだけでも問題点の整理ができるのだという話,相談機関として,スムーズな問題解決をサポートするために,より適切な相談先にコンタクトをとって担当者を紹介したり,行政機関や大使館に同行してフォローアップを怠らないようにしている,などの話をしていただき,担当者の方々が,日々大変な汗と情熱を注いでおられることを,改めて感じました。

 他方で,国際家事事件などでは,適用される法律が出身国や身分関係で異なってくることもあり,中途半端なアドバイスをしてしまうと問題を複雑化させてしまうこともあるので,どこまでやるべきかのボーダーの見極めが難しいといった意見もありました。

 外国人のリーガルアクセスはまだまだ発展途上で,解決しなければならない課題がたくさんあります。外国人事件に取り組む弁護士の一人としても,こういう問題なら,なぜ早く弁護士に相談してくれなかったんだろう,と思う相談も多いですが,自分からそういう方を見つけることには,限界もあります。また,弁護士に相談するより,市役所や外国人支援団体に相談した方が,細やかなフォローが得られるケースもあります。

 今回の懇談会では,あらためて,外国人の方の身近に相談機関があり,相談機関が緊密な連携をとることの重要性を確認することができました。各機関がそれぞれの特性を知り,役割分担することで,効率よく問題解決につなげることができます。私も,こうした外国人の方のリーガル・バリアフリーを目指し,引き続き微力を尽くしていきたいと考えています。

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