時代に翻弄された少年たち

『クアトロ・ラガッツィ』という本を読みました。イタリア語で「4人の少年」、副題は、「天正少年使節と世界帝国」です。美術史家である故・若桑みどり氏の大作です。

天正遣欧使節といえば、日本史の教科書では、伊藤マンショ、千々石ミゲル、原マルチノ、中浦ジュリアンという名前を教えられますが、個々の人物像は殆ど知らなかったので、興味をもって読みました。ビジネス界随一の読書家であり歴史に造詣の深い出口治明氏(ライフネット生命)がその著書で紹介していたのが読み始めるきっかけでした。

1582年、織田信長の時代に九州の大名のもとから派遣された十代前半の少年たち。命を失うかもしれない大航海を経てローマ法王などに謁見し、8年余りの歳月を経て日本に戻ってくるのですが、日本を発った直後に信長は暗殺されており、不運にも、彼らが戻ってきた日本は秀吉治世のキリシタン禁制の真っ只中でした。16世紀半ばから17世紀初頭までのヨーロッパやわが国の状況が、高山右近などキリシタン大名や宣教師等を通して詳細に描かれ、著者の海外文献の調査能力や独自の視点に圧倒されます。

鎖国完成に至るまでのキリシタン弾圧と殉教・棄教の状況が具体例を通じて克明に描かれて、クライマックスでは4名が辿った人生を、4名一人ひとりに焦点を当てて、最期まで丁寧に描いてゆきます。中浦ジュリアンが穴吊りの拷問に耐えて殉教し、人生を全うしてゆく描写には、言葉にならない感銘がありました。

彼らが戻ってきた日本の状況が違っていたら彼らの人生も全く違っていたであろうに、と思うと運命は残酷ですが、このような受難の人生こそが神が与えた試練なのでしょうか。

大河ドラマ『真田丸』が人気ですが、同じ時代、別の場所にスポットライトを当てると感じるものも違います。改めてよい本と出会ったことに感謝です。

弁護士 栗山博史