話題の本を読んで

夏に発表された芥川賞受賞作の『火花』(又良直樹)と『スクラップ・アンド・ビルド』(羽田圭介)、そして直木賞受賞作の『流』(東山彰良)を読んでみました。

芥川賞受賞作を読んだのは、田中慎弥の『共喰い』以来、直木賞受賞作は、安部龍太郎の『等伯』以来、久々です。

『火花』については、読書好きの何人かの人と話をしたのですが、感想は、神谷先輩がおかしくなってしまう最後のシーンがあまりにも唐突で…というもので、高評価は少なかったのですが、私としては、著者が語る「本当の地獄は、孤独の中にあるのではなく、世間のなかにこそある」というフレーズが印象的で、芸(芸術)の本物を追求するということと、しかし、その「本物性」の評価が大衆社会(世間)に委ねられているがゆえの苦悩を、芸とは縁のない外野にいながらも感じることができました。全く違う職業ですが、弁護士業界でも、同じようなことを感じることが多いからでしょうか。

『スクラップ・アンド・ビルド』も『火花』効果でしょうか、同様にベストセラーになりました。介護を要する祖父と同居し、向き合う若者の物語ですが、介護という重いテーマをユーモラスに描きながら、若者、母、叔母などの登場人物を通して、本当の思いやり・優しさとは何かを問いかけ、また、主人公が上から目線で見ていた祖父の人間としての強さに気付かされるなど、こちらも読んでよかったな、と。

『流』は、祖父を風呂で溺死させられるという衝撃的な事件の第一発見者となる台湾人の青年が、祖父を殺害した犯人を捜そうと奮闘する物語。この点ではミステリーですが、過去の戦争(日中戦争・内戦)を題材にして、復讐と、それと対極の許し、といった深いテーマを扱っている小説です。やはり直木賞受賞作は読みごたえがありました。

それぞれの次回作を期待したいと思います。

弁護士 栗山博史